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「聞こえているのに、分からない」その理由に、眼鏡と補聴器の店が5機種のスマートグラスで答える【2026年8月版】

カテゴリ smart glasses

ヨドバシカメラで10年家電を売って、いまは大阪の、眼鏡と補聴器の両方を扱う専門店 MOCA金剛店 スタッフの、なりさんです。EvenG2認定眼鏡店に登録させていただいております。

そういう感覚を、一人で抱えてこられた方に、何度も何度もお目にかかります。

市販の集音器をお試しになった方もいます。ご家族が使っている補聴器も、そばで見てこられた。それでも、何が合わなかったのか、誰も教えてくれなかった。年のせいだと片づけて、ここまで来られた方も多いです。

先日、そういう方が、スマートグラスの字幕という技術を知って、これならと期待して、お店にお越しくださいました。

この記事は、その期待に、眼鏡と補聴器を両方扱う店として、ファクトでお応えするものです。答えるべきことは1つ。これまで、ご自身に合わなかったのは、なぜか。

同じ道を通ってこられた方に、何度もお会いしてきました

市販の集音器や補聴器を、あれこれお試しになった方に、お店でも何度かお会いしてきました。合う方もいます。合わない方もいます。理由は、いつも人によって違う。簡単には決着がつきません。

ご家族が使っている補聴器を、そばで見てこられた方もいます。片耳につけていて、音は大きくなるけれど、なぜか声がそのまま伝わりにくいと聞かされた。それが、なぜなのか、誰も説明してくれないまま、そばで見ているだけだった、というお話も伺ってきました。

何が違うのか、誰も教えてくれない。そのまま、年のせいだと片づけて、しんどさと付き合ってこられた方も多いです。そういう方の多くが、今回のような技術の存在を知って、昭和10年生まれの方が目を輝かせてくださいます。難聴を感じ始めたばかりの方が、戸惑いながらも笑顔をこぼしてくださいます。

聞こえには、3つの力があります

補聴器と眼鏡、両方の店を長く続けてきた立場から、聞こえの力を整理すると、こう分けられます。

①音を感じる力(小さい音を、大きくする力)

②言葉を理解する力(聞こえた音を、意味のある言葉として組み立てる力)

③音を選ぶ力(必要な音と、そうでない音を切り分ける力)

補聴器が補えるのは①と③です。音量を上げることも、機種によっては周囲の雑音を抑えて話し声を際立たせることも、できます。

でも、②だけは補えません。補聴器に、聞こえた音をゆっくり再生させることも、脳の配線そのものを変えることもできないからです。音は聞こえているのに、何と言っているか分からない。そういう状態は、耳の問題というより、音を意味として組み立てる速さの問題です。

実際に測ってみると、それがよく分かります。ある方の語音明瞭度の検査では、40デシベル・50デシベルという、ふだんの会話に近い音量ではまったく書き取れませんでした。60デシベルまで音を上げて、ようやく書けるようになりましたが、それでも正答率は55%からで、さらに音量を上げると40%まで下がりました。音を大きくするほど、正解が増えるわけではありません。これが、②の力の性質です。

スマートグラスの字幕機能が肩代わりしているのは、ちょうどこの②です。音を文字に変えて、目で読む時間を作ります。だから、補聴器とスマートグラスは、競合していません。逆に言えば、①音を感じる力と③音を選ぶ力は、スマートグラスの担当ではない。ここから見ていく5機種も、この役割分担のとおりです。

コラム:眼鏡型で聞こえを助けるという発想自体は、実は昔からあります。リオネットの骨導メガネ型補聴器「TH-1105」は、眼鏡のつる(テンプル)そのものを振動させて、骨から音を伝える方式です。方式はスマートグラスとは真逆で、文字は出ません。音そのものを、直接届けます。

本格的に補聴器をご検討になる前には、まず医療機関の受診をお勧めしています。年のせいだと片づける前に、確かめておくべきことがあるからです。

もうひとつ、店頭でよくお伝えしていることを書いておきます。補聴器を使っている方との会話で大事なのは、大きな声を出すことより、ゆっくり話すこと。考えが音に追いつく速さで、話す。それだけで、伝わり方が変わります。

機能はここまで。ここからが、眼鏡と補聴器を両方扱う店としての本題です。

字幕は見えたのに、続けられなかった理由

先日、ご夫婦が店にお越しくださいました。お二人とも、聞こえの検査を受けられました。この眼鏡に興味を持たれたのは、ご主人がきっかけでした。字幕をお見せする前に、まず度数を確認するところから始めました。

ご主人は、以前どこかの店頭でEven G2の字幕をご覧になったことがあると話してくださいました。字幕自体は見えたけれど、見続けるのがしんどかったとのこと。これは特定の店や機種のせいではありません。度数が合っていない状態で字幕を追うと、誰にでも起こることです。

https://note.com/michig2/n/nc534839c832a

もしかして、と思いました。オートレフで目の状態を測り、店に置いている度あり体験用の自家製ツールでお試しいただいたところ、そちらの方が見やすいとのこと。これも、これまで字幕が続かなかった要因のひとつのようでした。

実際、ご主人の見え方には、左右で差がありました。度数を整えると、それまでぼやけて読み込みにくかった字幕が、はっきり読めるようになりました。

つまり、字幕が読みにくい・続けられないという感覚の正体は、端末の性能でも表示の遅延でもなく、光学的なピントのズレであることが、実はよくあることを、知っておいていただければと思います。

②の力は、字幕が肩代わりしてくれます。でも、その字幕を読み続けるには、目の度数が合っていなければなりません。眼鏡だけを扱う店では、そこまでは見ません。補聴器だけを扱う店では、字幕の話にはたどり着かない。両方を扱っているからこそ、聞こえのご相談から、その字幕を実際に読み続けられるかどうかまで、続けて面倒を見ることができます。ここは、両方を扱う店にしか気づけない場所だと考えています。

聞こえをチェックする場で、無意識に、聞こえやすい方の耳を話し手へ向ける姿勢になっている方に、何度か気づいたことがあります。ご本人も、その癖には気づいていません。長い時間をかけて、体の方が先に対処してきた跡です。

音は、ちゃんと聞こえている。それでも、言葉としては出てこない。分からない――そうご本人が話してくださいました。何度繰り返しても、変わりませんでした。それは、ご本人の努力が足りないからではない。②の力が担っている場所のお話だからです。

体験いただいた製品としては、Even Realities社が国内正規販売しているスマートグラスです。価格は99,800円(税込・度付きレンズは別途)、度数の対応幅は-12.00〜+12.00。方式は一体型で、ディスプレイの部品そのものが度付きレンズを兼ねます。度の強い方でも、レンズごと作り替えれば、いつもの眼鏡と同じようにおかけいただけます。字幕機能は「会話サポート(Conversate)」という名前で搭載されていて、重量は36g。バッテリーは本体だけで最大2日、専用ケースでさらに7回分を追加できます。スピーカーは、意図的に非搭載です。

一方で、知っておいていただきたいこともあります。海外メディアのレビューでは、聞き取りの精度についていくつかの実例が報告されていました。レビュアーご本人のお名前を別の名前として書き起こしてしまった例、会話に出てきたウェブサイト名を固有名詞として認識できず、その語の一般的な意味を勝手に補って表示してしまった例です。総括は「聞き取りはおおむね機能したが、聞き間違いもあり、無関係な文脈を足すこともあった」というものでした。

日頃からAIとよろしくやっている私としては、さもありなんと感じます。それを分かった上でお使いいただくのが、スマートグラス・AIというテクノロジーと付き合っていくコツかと思います。そして、これは日々アップデートされていきます。製品をお手にしていただいても、それ以降の進化が見込まれるのが、デジタルの道具ならではです。相手が言い間違えているとして、それでも、察して会話を続けるご経験は誰にでもあるでしょう。

聴覚支援に詳しい専門家の方が、店にお越しくださったことがあります。実機をご覧になり、耳が聞こえにくい方にとってはまさにこれだ、とはっきり仰ってくださいました。私どもとしても、補聴器をつけるほどではないけれど聞き取りにくさを感じている方が、Even G2にチャレンジされている傾向があると感じています。耳が苦手な方にとっての、ひとつの福音になり得ると考えています。

もちろん、うまくいく話ばかりではありません。以前、補聴器を使っている方に、定期調整のタイミングでEven G2の字幕をお試しいただいたことがあります。実際にかけていただくと、字幕はちゃんと出ました。会話の内容がそのまま文字になって、ご本人もそれをご確認いただけました。技術としては機能しました。それでも、その方は導入をお選びになりませんでした。理由は、聞こえへのご不満ではなく、日常であれこれ操作する手間だった。技術が機能することと、生活に根づくことは、別の話です。

ガジェットとして楽しめる感じ方と、常時かけていても疲れない度数は、別物です。その方の生活に沿った見え方・度数で、メガネの感覚としてお試しいただけることが、店頭で扱う意味だとも考えています。

ここから先の4機種は、店でお試しいただけるアイテムではありません。カタログと、私が試した感覚と、そして公開されている情報で確認できた範囲だけを、正直に書きます。知っている量の差が、そのまま文章の厚みの差になっています。優劣の話ではありません。

YYSystemとの連携に惹かれた方へ、先にお伝えしたいことがあります

AiLENS V1は、ThinkARのスマートグラスで、国内はSB C&S社が販売しています。価格は87,780円(税込)。単眼のGreen MicroLED(640×480)を採用していて、重量は約38g。バッテリーは連続最大約10時間。30分の充電で80%まで戻ります。字幕機能は単体でも使えるほか、アイシン社の「YYSystem」というアプリ群と連携させることもできます。YYSystemは、聴覚に関するやり取りをトータルに支援するアプリシリーズとしてご案内されています。

https://cas.softbank.jp/press/260603_01/

機能を使うためにかかる費用は月額制。個人プランなら無料(音声認識は月80時間まで)、個人サブスクは月額1,000円です。(2026年8月現在)

まず、店として先にお伝えしておきたいことがあります。度付きレンズについては、販売店やレビューではコンタクトレンズとの併用がご案内されていますが、公式サイトに度付きレンズ対応のご案内はありません。日常的にピントを合わせて文字を視認したい方にとっては、ここが最初にご確認いただきたいポイントです。眼鏡も扱う店である以上、この一点は黙っておけません。

もうひとつ、知っておいていただきたい仕様があります。YYSystemを使うには、専用のファームウェアへの切り替えが必要で、切り替えている間は、AiLENS本来の機能(76言語翻訳・テレプロンプター機能など)が使えなくなる、排他の仕様です。お買い求めいただいても、常にどちらも使えるというわけではありません。

言葉の壁を越えたい方へ、字幕はどこまで届くのか

INMO GO3は、INMO JAPANが国内正規で販売するスマートグラスです。価格は99,800円(税込)。この機種のいちばんの特徴は、対応する言語の広さ。「二カ国語字幕」機能を搭載し、77言語の理解と98言語への翻訳に対応、オフライン翻訳でも9言語(日本語を含む)を扱えます。両眼のグリーンMicroLED(640×480、視野角30°)を採用し、重量は58g、バッテリーは約8時間で、予備1個が付属する交換式です。度付きレンズは、本体のフレームの内側にもう一枚レンズを差し込む「インサート型」で対応しています。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0H4KF6WPW?tag=g2dx0e-22

日本語での聞き取りの精度や遅延がどの程度かは、今回まだ確認できていません。過度に期待させる書き方は避けたいので、正直に「未確認」と書いておきます。

明るさの数字が、今回いちばん際立っていました

Rokidが国内正規で販売するRokid Glassesは、光導波路とMicroLEDを組み合わせた表示方式を採用していて、最大1500nitsという、今回調べた5機種の中でいちばん明るい輝度に対応しています。価格は109,890円(税込)。対応言語は89言語以上、主要6言語(日本語を含む)はオフラインでも使えます。重量は約49g、バッテリーは210mAhで、20分の充電で80%まで戻ります。度付きレンズは、INMO GO3と同じ「インサート型」で対応しています。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0H2DYK149?tag=g2dx0e-22

輝度の数字が高いことは確かめられましたが、実際に暗い場所でどこまで見えるか、明るい屋外でどこまで粘るかは、今回の調査では確認できていません。数字から先の実感は、店として語れる段階にまだありません。日本語での聞き取りの精度や遅延も、まだ確認できていません。

日本発という安心と、先に見据えるもの

SABERAは、福井県鯖江という眼鏡づくりの土地で生まれた、jig.jp(鯖江・Boston Club/Cellid共同開発)のスマートグラスです。福井に拠点を置くシステム会社が旗を振り、鯖江の老舗デザインブランドを複数抱えるBoston Club、海外での実績も多いスマートグラス専門チームのCellid社がチームになって推し進めるアイテムです。

価格は通常92,400円(税込)、Makuakeでの早割は64,990円〜(数量限定)でした。片眼(右のみ)の緑単色ディスプレイ(640×480、視野角30°)を採用し、重量は約38g。度付きレンズは「インサート型」で、0.00〜-6.00の範囲に対応しています。スピーカーは非搭載と明記されています。

https://sabera.glass/

字幕機能や文字起こし・議事録機能は、メーカーが「現時点で想定している代表的な機能」としてご案内しているもので、この記事を書いている2026年8月17日時点では、正式リリースを示す公式発表も、実機レビューも、まだ確認できていません。Makuakeでの先行販売はすでに終了していて、一般販売は2026年8月下旬開始予定です。

5機種を並べて、見えてきたこと

5機種の価格を並べてみると、87,780円から109,890円の範囲に、ほぼ横並びで収まっています。数万円の差はありますが、突き抜けて高い機種も、極端に安い機種も見当たりません。

それなのに、実際に選択を分けているのは、価格ではありませんでした。字幕の対応言語数でもありませんでした。分かれているのは、度数をどう扱うか、という1点。Even G2は一体型で、レンズごと度数を作り替えます。AiLENS V1は、度付きレンズには公式に対応していません。INMO GO3・Rokid Glasses・SABERAは、フレームの内側にもう一枚差し込むインサート型です。度なしで大丈夫と想定していたとしても、度あり体験で、表示の明るさ・はっきり具合の違いに驚かれる方は多いです。5機種を並べて、初めて見えてきた構造です。

もうひとつ、共通して言えることがあります。今回の5機種は、どれも、完璧な聞き取りを謳ってはいませんでした。聞き間違いの実例があるもの。機能が排他になっているもの。精度がまだ確認できていないもの。そもそもまだ実装されていない機能があるもの。どれも、まだ発展の途中にある技術を、発展の途中のまま、正直に見せている状態。現状の使用感を喜ばれる方が、お選びになっています。

これまで合わなかったのは、市販の集音器の性能が足りなかったからでも、ご家族の補聴器の選び方が間違っていたからでもない。①③を補う道具と、②を補う道具は、そもそも別のものでした。それだけのことです。

今回、ご相談をくださった方だけでなく、同じように一人で抱えてこられた方にも、この資料が役に立てばと願っています。

機能は、選ぶための材料でしかない。選ぶのは、いつも生活の側です。

体験・ご相談について

ご予約がなくても店頭でご覧いただけます(smart eyewear担当が不在の場合があります)。


おまけ:5機種の早見表

ここまでの5機種を、一覧にしています。


出典

Even G2=公式サイト実機レビュー(Gizmodo)|AiLENS V1=YYSystem公式YYSystem料金プラン排他仕様の報道(Car Watch)|INMO GO3=公式サイト|Rokid Glasses=公式サイト|SABERA=公式サイト機能情報(TechnoEdge)|リオネットTH-1105=製品ページ|比較表データ=すまほん!!ソフトバンクプレスリリース


店舗情報

MOCA金剛店

住所:〒584-0073 大阪府富田林市寺池台1-20-18

電話:0721-55-3188

営業時間:平日 9:30〜19:00/土日 9:30〜18:00/木曜のみ 9:30〜13:30

定休:第4日曜

アクセス:南海 なんば駅より急行で約30分

運営:株式会社メガネの金剛

店舗ページ:https://www.opt-moca.com/shop/shop-kongo/

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