
ずっと使っている道具には愛着が沸くもの。
でも、いつかは傷んで使えなくなってしまいます。
この記事は思い出の眼鏡を
10年使い続けていた男性のお話です。
メガネにまつわる人々のエピソードをお楽しみください

この眼鏡をかけて、もう十年が経つ。
最初にこのフレームを選んだときのことを、
今でも覚えている。
店の棚に並ぶたくさんの眼鏡の中で、
一番しっくりきたのがこれだった。
掛けた瞬間、顔に馴染んだ気がしたし、
鏡の中の自分が少しだけ頼もしく見えた。
それからというもの、
どんな日もこの眼鏡と一緒だった。
仕事に追われた日も、
雨に濡れながら帰った夜も、
旅行先で見た美しい景色も、
すべてこの眼鏡を通して見てきた。
だからだろうか。
レンズに小さな傷が増え、
コーティングが剥がれて光を乱反射するようになっても
フレームが少し歪んでズレやすくなっても
「まだ使える!」と意固地になってしまう。
何度も友人や家族と同じやりとりをした。
「そろそろ新しいのに変えたら?」
「いや、まだ大丈夫!」
だって、レンズを拭けば見えるし、
ちょっとずれるくらい指で直せばいい。
でも、本当は気づいていた。
最近 夜道のライトが眩しく見えたり、
階段の段差が分かりづらくなったり。
ふとした瞬間に、
目を細めて物を見ている自分がいることに。
「試しにかけてみませんか?」
眼鏡屋の店員にそう言われたとき、
最初は断ろうとした。
「まだ大丈夫です」
そう言いかけたのに、なぜか言葉が喉に詰まった。
(これが最後のつもりで)
自分に言い訳しながら、
店員が差し出す検査枠を手に取った。
かけた瞬間、世界が変わった。
床の木目がはっきりと見え、
遠くの看板の文字が驚くほどクリアだった。
店の奥の棚に並ぶ眼鏡が、
一つ一つくっきりと見える。
今まで、あんなにも
曖昧な世界を見ていたのか。
「どうですか?」
店員が微笑む。
思わず
「よく見えますね」
と答えた。
店員は笑顔で続けた。
「度数は同じですよ」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「でも、向こうまではっきり見えますよ?」
「おそらく、レンズの傷やコーティングの劣化で
視界が曇っていたんです。
キレイなレンズにしただけで、
本来の視界に戻ったんですよ」
そう言われて、愕然とした。
十年間、私は少しずつ曇っていく視界に慣れてしまい、
本当の見え方を忘れていたのだ。
「もっと合った度数があるかもしれません。
しっかりお測りしましょうか?」
店員に尋ねられ、 私は小さく頷いた。
「はい、お願いします」
新しい眼鏡をかけたら、
どんな景色が見えるのだろう。
少しだけ不安だけれど
それ以上に楽しみな気がしていた。
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